糖尿病

なぜ変えないの?糖尿病の標準治療が変わらない理由

糖尿病「あるある」にすらなってきた

 

「悪化する患者さんを

さんざん見ているのに、

なぜやり方をかえないのか?」

 

疑問に思わないのか?」

 

といった事に関して。

 

 

 

 

これは先日の記事

「従来治療などにお怒りの方へ」

と少し内容が関係します。

 

 

上記の疑問は、まさに

「外から見た疑問」

の典型です。

 

これに対して、「内から見たらどうなの?」を今回は解説致します。

 

 

以下、内容です。

 

 

 

 

(1)守りに入る

 

まず

多くを持つ者ほど守りに入る」

という事です。

 

医師は医師免許があって初めて医師たり得ます。

 

医師免許がなくなったら「先生、先生」と呼んで頂ける世界から、

一気に「ただの落ちぶれた人」扱いに転落です。

 

 

6年以上かけて、

そしてその後も人生のほとんどをかけている

「基礎」

となる医師免許を失うかもしれない、

という事に対しては

非常に「守り」に入るのが医師です。

当たり前ですね。

 

 

この「守り」の要(かなめ)になるのが

「ガイドライン」

です。

 

基本的にはこのガイドライン通りなら、

何かあっても、ある程度はガイドラインに守られます。

実際に医療訴訟ではこの「ガイドライン」が必ず参考にされます。

 

 

「ガイドライン」なんて、と言っていても

実際に訴訟の際にガイドラインから外れていれば、

訴訟の際には、

それだけで原告から

相当に攻められるポイント

となっていしまいます。

 

 

 

そして医療訴訟というのは

「医療側に全く過失や

 落ち度が無くても起こる」

というのを医師ならば誰でも知っています。

 

 

そう、「全く過失がなくても」起きるのが医療訴訟です。

 

 

 

その場合も、

大変な時間と労力を費やし、

裁判に臨む必要があります。

 

 

一審で、完全勝訴しても、

高等裁判所で棄却になっても、

最高裁までいくのが医療訴訟です。

 

最高裁で棄却になるまで

「強制的に」時間と労力が割かれます。

お安くない額の弁護士費用もかかります。

 

 

つまり「ガイドライン」から外れる事、

というのはよっぽどのメリットがないと

通常の医師は行いません。

 

 

医師なら「ガイドライン」から外れる事の意味を

骨身に染みて

知っています。

 

 

 

訴訟社会になってきた現代の日本では、

自分や、ごく近しい知り合いの医師

訴訟に巻き込まれていますので。

 

 

そんな世の中に、既になっています。

 

 

 

 

(2)無知の壁

 

悪化した症例に「何度も出会っている筈」という点に関して。

 

これはその通りで、実際に患者さんを多数見ている医師なら、

必ず何度も合併症が進行した症例を見ています。

 

 

ですが、これは

他の通常の医師

が診ていても同様に起きます。

 

 

医師が情報源にする

「学会の論文」

「格式高い専門誌」

でも同様です。

 

 

 

そしてそこにはガイドライン通りの治療法しか載っておらず、

せいぜい新薬を使った治療法くらいしか載っていません。

 

 

「やり方を変えようにも他に知らない」

これが普通の医師です。

 

このため、こういった医師も

「自分はベストの治療を行っている」

と胸を張って言います。

 

 

 

医師は、ネットや一般書で
色々言われても

「そういう胡散臭いのは相手にするな」

と医学部の時代から

何度も何度も、

しつこくしつこく、

折に触れて、

徹底的に、

教え込まれて来ています。

 

 

あくまで「論文」「専門誌」が信頼に値する情報源、

というのが一般的な医師です。

 

 

これが

「無知の壁」

です。

 

なにか余程の事がないと、「無知の壁」は越えられません。

 

 

人は

自分が見たい・聞きたい事しか、

見ないし・聞きません

 

 

 

 

 

(3)常識の壁

このような

「糖尿病は一生良くならない。インスリンは10単位以上なら絶対に辞められない」

などといった事が医学部の頃から教え込まれています。

 

 

すると、

「いや、本当は良くなる方法があるのではないか?」

「現在の標準治療は間違っているのではないか?」

といった発想自体が出てきません。

 

 

「ガイドライン通り」=「私は正しい」

という考えです。

 

自分は正しいと信じているのに、それに疑問を持つ筈もありません。

 

これが「常識の壁」です。

 

「自分は正しい症候群」

というやつです。

 

 

 

ガイドラインというのは「現代のスタンダード」というだけで、

決して

「最高・最良の治療」では

全くない、

という事に考えが及びません。

 

 

 

1000年後から今の治療を振り返れば、

ほぼ全部の治療が「間違い」でしょう。

 

 

こういった事に考えが及ばなくなっています。

 

 

これが「常識の壁」です。

 

 

実際に自分の患者さんが勝手に糖質制限をして良くなったとしても、

「糖質制限のおかげ」とはあまり考えず、

「何か他に原因でもあったのだろう」

とか

「単なる例外だろう」

としか思わない、という事です。

 

 

 

〜〜〜

 

 

以上、代表的な3つの理由を挙げました。

 

 

 

いかにこれらを越える事がハードルが高いか、

医師にとってそれを越える事が何らモチベーションにならないか、

分かったかと思います。

 

 

 

なお、

「患者のためなら何だってする!」

というだけの医師は

一見よさそうですが

「自分を犠牲にする」

という一点においてダメダメです。

 

 

 

「自分を活かし、患者を生かす」

これが名医です。

 

「自分を殺す」ような医師が

他人を活かす事など出来る筈もありません。

 

 

 

という事で、これだけの事があるのに、

ガイドライン通りではない治療を

行う医師が

「おかしい」

のです。

 

「異常」で「異端」なのです。

 

 

そんな医師が、医師の大半を占めるようになる筈がありません。

 

 

 

「普通」が変わるまで、

「ガイドライン」が変わるまでは、

医師は変わりません

 

 

 

このため患者さんには

「さっさと自分で

 良くなって下さい」

とお伝えしています。

 

「世の中が変わって、医師が変わる」そういう順番です。

 

 

そんな変化を待つ必要など全くありません。

さっさと良くなって下さい。

 

それが何より世の中を変えます。

 

 

 

 

戦略として

「世の中を変えて、

 医師を変える」

という事になります。

 

 

とはいっても、

結局は医師が世代交代しない事には

ガイドラインは変わらない事でしょう。

 

 

ですが少なくとも、知った人には

自分が変わる

チャンスが生まれる

事には違いありません。

 

 

情報無しでは

チャンスさえもありません。

 

活かすかどうかは

その人次第ですが。

 

 

という事で

今後も情報発信をして参ります。

 

 

以上、なぜ変えないの?でした。

 

ABOUT ME
医師水野
内科医。2003年に医師免許取得(医籍登録)。 両親とも糖尿病家系。2度肥満だった自らの体の劇的な変化をきっかけに、糖質制限を中心とした治療を開始。 その後、糖質オフやビタミン・ミネラルなどの情報をブログ、Facebook、YouTubeなどで発信。 監修本「糖質オフ大全科 (主婦の友社)」が中国でミリオンセラーに。 著書は「糖尿病の真実~なぜ患者は増え続けるのか~ (光文社新書)」「1年で14キロ痩せた医師が教える 医学的に内臓脂肪を落とす方法(エクスナレッジ)」「薬に頼らず血糖値を下げる方法(アチーブメント出版)」、など。