今回は糖尿病で眼底出血する理由について。
眼底の写真
糖尿病が進行すると、「眼底出血」を起こす場合があります。
正常な眼底はこのような感じです。
次に1型糖尿病で重度の眼底出血(火焔状出血)の状態はこのようです。
眼底の至る所に出血がみられます。
では、なぜ糖尿病があるとこのように眼底出血をするのでしょうか?
なぜ糖尿病で眼底出血するか?
通常の説明では、
糖尿病で細かい眼底の血管が詰まる
↓
詰まった血管の代わりに「新生血管」という血管が新しく伸びてくる
↓
「新生血管」は脆いので破れて出血する
という説明がされます。
血管が詰まるので、「新生血管」が生えてくる、という説明です。
なるほど、と思いますが、「糖尿病」以外にも血管が詰まる病気は色々あります。
しかし、「新生血管」などという異常な血管が生えてくるのは「糖尿病」の場合のみです。
「新生血管」が生えるのは「糖尿病」のみ。
血管が詰まるから新生血管が生える、というなら、他の血管が詰まる病気でも新生血管が生えてもおかしくはありませんが、「糖尿病」でしか「新生血管」は生えてきません。
他の血管が詰まる病気では「新生血管」は生えて来ない。
糖尿病でだけ「新生血管」は生えてくる。
つまり、血管が詰まるから、新生血管が生えてくる、という理論では説明がつきません。
なぜ、「糖尿病」でだけ「新生血管」は生えてくるのでしょうか?
通常の説明では、この部分は説明されません。
なぜ「糖尿病」でだけ「新生血管」が生えてくるのか?
新しく「異常」で「脆い(もろい)」血管が「生えてくる」、というのがポイントです。
たしかに、「血管が詰まる」のがきっかけにはなっています。
その次に異常な血管が生えてくるのは「糖尿病」ならではの事が関わっているハズです。
つまり、細胞を異常に増やす要因があり、それによって「異常な」血管が生えてきてしまう、という事です。
糖尿病で「細胞を異常に増やす要因」、思い浮かびますか?
糖尿病では細胞を異常に増やす要因がある
それは、「インスリン」です。
インスリンには成長ホルモンのように細胞を増加させる作用があります。
その作用は癌細胞も増加させてしまう事で有名です・・・。
高インスリン血症は10種類異常の癌との関係性が示唆されています。
そう、糖尿病では「インスリン」が多い状態になるため、血管がボロボロになり、そして詰まり、さらにそのインスリンの細胞を増やす作用によって「新生血管」が生えてきます。
糖質摂取過多
↓
インスリンが過剰に分泌される
↓
眼底の血管が詰まる
↓
さらにインスリン過剰状態が持続
↓
インスリンによって「新生血管」が生える
こういう流れです。
従来は「血糖値が高いから」眼底出血する、と言われていました。
しかし、そうではありません。
インスリンを少なく保てば、「血糖値」が高く(HbA1c10%以上)でも、眼底は変化がない症例を多く診ました。
インスリンを少なく保つ治療法についてはコチラ。
インスリンを少なく保てば、たとえ血糖値が高くても眼底出血は防げる。
私も当初は「血糖値が高ければ」インスリンが多かろうが少なかろうが、「眼底出血する」と思っていました。
しかし、実際に「血糖値が高くても」「インスリンが少ない状態で」「眼底出血しない」という症例を何例も診るにつれて、それが間違いであったと分かりました。
逆に血糖値下げてもインスリンが多ければ?
では、逆にインスリンやインスリンを分泌させる薬で、血糖値を下げたなら眼底出血はどうでしょうか?
従来の考えでは血糖値を下げれば眼底出血しない、でしたから眼底出血はしないハズです。
しかし、実際には高インスリン治療によって血糖値を下げると、眼底出血など糖尿病網膜症は進んでしまいます。
高インスリン治療で血糖値を下げると、眼底出血したり、糖尿病網膜症が進行してしまう。
DPP-4阻害薬で眼底出血
実際に血糖コントロールが比較的良くても、DPP-4阻害薬を使用中に眼底出血したり、糖尿病網膜症が進んだりする例があります。
あまり論文化されたり症例報告はされていませんが、患者さん自身からの実体験も寄せられています。
今は「低インスリン」にするSGLT2阻害薬が併用される例が出てきたので、軽減されています。
しかし、SGLT2阻害薬の発売前で、DPP-4阻害薬が「第一選択薬」としてガンガン処方されていた時には、「血糖コントロールが良くても眼底出血」などの事例をみかけました。
これはまさに典型的な「高インスリン」による臓器障害です。
高インスリン薬についてはコチラ。
糖尿病治療の目的
最終的な糖尿病治療の目的は、糖尿病の「完治」ですが、これはまだまだ手が届かない状況です。
次に目指す目標は、「合併症を起こさない」という事です。
糖尿病は血糖値が高いだけでは、500〜600を常時超えるようにならない限り、倒れたりする事はあまりありません。
それよりも、患者さんは、「失明」したり、「人工透析」になったり、「手足を切断」したりする「合併症」の方を避けたい事でしょう。
従来の高インスリン治療では、インスリンはむしろ増やしてしまうので、血糖値こそ下がりますが、臓器障害のダメージは増え、むしろ「失明」や「人工透析」や「手足の切断」を近づけてしまいます。
従来の高インスリン治療では、「高インスリン」により臓器にダメージを与え、「失明」「人工透析」「手足の切断」のリスクを高めてしまう。
糖尿病で第一に「コントロール」すべきは、「インスリン量」です。
インスリンを少なく保つ事が、各種の合併症を防ぎます。
血糖コントロールはその次です。
糖尿病で合併症を避けるには第一に「インスリン・オフ」。
以上、糖尿病で眼底出血する理由、でした。