今回はインスリン・オフ療法について。
※名前変更について
2015年6月20日に当初この記事を書きましたが、翌年の2016年6月5日の神戸講演時に旧「インスリン分泌抑制法」から、「インスリン・オフ療法」へと名称変更しました。
インスリンがヤバい!というのは一般的にはあまり知られていません。
・3大慢性リスク:太る、認知症になる、癌になる・癌が増える
・細胞が中からダメージをくらう
・失明リスクが増える
・腎不全・透析リスクが増える
・浮腫む
等々、様々なリスクがあります。
これについては今までの講演会でもよく話題にしています。
関連する動画も4つあります。
4つの動画
1つ目の動画:伝説の「糖尿病教室」
2つ目の動画:インスリンの真実
3つ目の動画:一生糖尿病にならない過ごし方
4つ目の動画:薬に頼らず血糖値を下げる方法
インスリンを最小限にするにはどうしたら良いのでしょうか?
血糖値を上げないのはもちろん、インスリンもあまり分泌されない、という状況が望ましいのです。
「高血糖・インスリン少なめ」
と、
「血糖普通・インスリンがドバドバ」
を比較すると、むしろ
「高血糖・インスリン少なめ」の方が身体の受けるダメージが少ない場合もよくあります。
この「インスリン最小限」を目指すのが「インスリン・オフ療法」です。
「インスリン最小限」を目指すのが「インスリン・オフ療法」。
ただし、高血糖は大丈夫といっても、血糖値400〜500以上になると代謝自体が乱れてアシドーシスやけいれん発作など別の病態が起きてきます。
また、どれくらいまでの血糖値が大丈夫かは人によります。
食事はどんなものがいいか?
もちろん、インスリン分泌が少なくてすむようにするためには、その原因となる糖質の摂取を避ける必要があります。
つまり、食事は糖質オフが前提条件です。
そして、できれば断糖です。
使うとしたら、薬は?
薬剤はシンプルです。
現状で使える「インスリン分泌が少なくて済むようになる薬剤」は4種類のみだからです。
インスリンをオフしてくれる薬剤は4種類。
私が処方する薬で言えば、実質3種類です。
また、どれも「インスリン自体」や「インスリンを出す薬」よりは効果が弱めで、副作用を気にしなければなりません。(ですので、一般的な医療機関ではあまり処方されていません)
強い薬からの変更の場合には、食事をしっかりと糖質オフにしましょう。
<1.α-GI>
腸からの糖質の吸収をゆっくりにする薬剤。
2糖類から単糖類への分解を抑制します。
略さずに書くと「アルファ・グルコシダーゼ阻害薬」となります。
副作用は腹部膨満感やオナラが出る、便秘または下痢などです。
腸の壁にくっついて作用する薬で、基本的にはあまり体内には入ってきません。
お腹の副作用さえ出なければ、飲みやすい薬です。
また食事毎に飲む薬のため、1日3食の方は、1日3回、食事の直前に飲む必要があります。
「直前」は理想的には食事の5分前です。
飲み忘れたらどうするか?は、よく訊かれる質問です。
食後15分以内であれば、多少効果があるとされています。
15分を過ぎている場合には、内服しても効果はありませんので、次の食事の前にはきちんと飲みましょう。
<2.メトホルミン(ビグアナイド薬)>
肝臓に作用して糖新生(血糖を作る作用)を抑制し、
組織での糖取り込みを促進、
小腸での糖吸収の抑制する薬剤。
幅広い作用があるのと引き換えに
副作用も幅広くあるので非常に注意が必要な薬剤です。
メトホルミンは副作用の頻度が多く、
命の危険性のある副作用もあるため、
非常に注意が必要な薬剤。
副作用は下痢や、食思不振、倦怠感、口内甘味などです。
下痢などが多く、3人に1人くらいの割合で副作用が起きます。
また、ダルくなっている場合は「乳酸アシドーシス」という副作用が起きている場合があります。
この場合は内服を中止し、すぐに主治医に相談してください。
がんばって無理に飲み続けると命に関わる場合があります。
というように副作用が多い薬ですが、
増量すれば効き目が強く、
しかも価格も安い、
という事から欧米では糖尿病の第一選択薬(糖尿病の人に最初に出す薬)となっています。
また最初は500mgから開始して、徐々に増やしていく薬です。
1000mgを越えたあたりから効いてきます。
ですので、最初は効果がありません。
増やすと効き目が出てきます
しかし、増量していくと効果が出るのとともに、
副作用の確率も高くなり、
副作用の強さも強くなります。
増量の時にも非常に注意が必要です。
メトホルミンは量を増やす時にも注意が必要!
<3.SGLT2阻害薬>
尿に糖を出す薬剤。
正確には尿を作る途中で1回出したものを再度吸収していますが、その一部をブロックして、尿に糖を出させる薬剤です。
副作用は体重減少、脱水、尿路感染症などです。
体重減少があるので、やせている方には処方しづらい薬です。
また糖質を共に水分も尿から出て行ってしまい脱水になりますので、この薬を飲んでいる間は特に、水分はしっかり摂るようにしてください。
暑い夏場や、寒くてあまり水分を摂らない冬場、寝ているので水分を摂らない夜中など、ご注意ください。
尿路感染は女性に多く起こります。
毎日オムツをしている、
毎日生理用パッドをしている、
という場合には
「尿路感染」
や
「陰部白癬(股あたりの皮膚にカビが生える)」
などの副作用が、ほぼ100%起きます。
この場合は、
紙系ではなく綿系にするか、
オムツやパッドの使用を中止すれば、
尿路や陰部の副作用を避ける事ができます。
紙オムツや生理用パッドなどを使用している場合には
SGLT2阻害薬の使用を避ける。
<4.ピオグリタゾン>
インスリンの効き目を増やすとともに、
肝臓での糖新生(血糖値を作る)を抑制し、
組織での糖利用を高める薬剤。
心不全の方には禁忌です。心不全を悪化させます。
他に副作用としては、浮腫や体重増加があります。
男性では膀胱癌のリスクが一時取り沙汰されましたが、根拠となる論文にやや問題があり、それ程気にしなくても良いのかもしれません。
江部先生のブログ参照を。
私の場合、一時はよく処方していましたが、浮腫や体重増加や心不全の副作用が目立ち、一方で血糖値はあまり下がらなかったため、処方しなくなりました。
「インスリン・オフ療法」で使用する薬剤は、以上の4つです。
当然、それぞれ、副作用があり注意が必要です。
もちろん、最終的には糖質オフをきっちりとして、内服も不必要になれば最高です。
膵臓の機能が弱っている場合には、ビタミンやミネラルの補充も大切になってきます。
以上、インスリン・オフ療法でした。