今回は尿は正常でも泡立つ!というお話。
実はこの質問、内科でも訊かれます。
で、続く言葉は「糖尿病じゃないんですかっ?!」です。
そう、糖尿病でも尿は泡立ちます。
そして、糖尿病以外でも尿は泡立ちます。
健康な泡か、病気による泡か?
とりあえず、覚えておくことは「泡立ちがクリーミーでずっと消えないさらに匂いや色、濁りっぷりも気になる」という場合には、病気の可能性があるという事です。
よく言われるのが、上の写真のビールの泡のようにクリーミーな泡立ちをしていたら病気の可能性があるかも、という事です。
といっても単に目安ですので正確には検査しないと分かりませんし、検査で何ともない事もよくあります。
今回は、病気ではなく、健康でも泡が立つという場合について主に書きます。
そして、それに関連した病気の場合についても書いていきます。
健康でも泡立つ
また、朝イチの尿や、運動で汗をかいた後など脱水気味で濃縮されている場合は尿の泡立ちが強めとなります。
これは濃いので泡立つ、というパターン。
あとは、尿には元々泡が立つ成分が入っています。
その尿に必ず入っている泡立ち成分は「ウロビリノーゲン」といいます。
逆に、尿にウロビリノーゲンが入っていない場合は病気です。
尿中のウロビリノーゲンは尿検査で簡単に測れます。
尿中ウロビリノーゲンの正常値は(±)です。
ウロビリノーゲンは、尿中に常に微量に含まれているのが正常です。
このウロビリノーゲン、界面活性作用(石けん作用)があるので、尿が泡立つという訳です。
ウロビリノーゲンは、肝臓で作られるビリルビンという色素が腸内細菌によって分解されてできるものです。
〜〜以下、詳しく知りたい方向け〜〜
赤血球のゴミ(廃棄物)とも言えるビリルビン。
このビリルビンの長い旅は肝臓からスタートします。
このビリルビンは、肝臓から胆汁の一部として出され、胆汁とともに腸に流れ出ます。
ビリルビンには界面活性作用があるため食べたアブラを分解しやすくするぞ、という訳です。
洗剤(=界面活性剤)で油汚れが落ちる的な事です。
界面活性剤は水とアブラを混ぜあわせる効果があります。
そこで、腸内細菌によってビリルビンはウロビリノーゲンへ分解されます。
腸内細菌によって分解されてできたウロビリノーゲンは80%以上はそのまま便に混じって体外に出ます。
ウロビリノーゲンの20%程度が腸から吸収されます。
そして、血液中を流れて肝臓に戻ります。
肝臓さん、再び!
そして肝臓でウロビリノーゲンはビリルビンに再合成されます。
ビリルビン、再び!!
腸から吸収されたほんの一部のウロビリノーゲンが肝臓に行かずに腎臓に行って、尿に混じることで、尿ウロビリノーゲンとなります。
ビリルビン・ウロビリノーゲンの旅、結構ドラマチックですね。
そして、腸と肝臓をグルグル回っています。
これを腸肝循環(ちょうかんじゅんかん)と言います。
とってもリサイクルしています。
ウロビリノーゲンが多い
上記のウロビリノーゲンが増える状態があります。
そうすると、ウロビリノーゲンという界面活性剤が多く入っている状態となるので泡立ちが強くなります。
そういう状態は下記のものです。
肝炎、肝硬変、肝臓癌
肝臓の機能が落ちると腸から吸収されたウロビリノーゲンがビリルビンに変換されずにそのまま尿中に出ます。
このため、尿に出るウロビリノーゲンは正常の数十倍になります。
心不全
ちょっと意外なのが心不全。
これは心臓の機能が弱っていると、肝臓に血がたまるためです。
これを「うっ血肝」と言い、やはり肝臓の機能が低下します。
あとは、上の肝炎などと同じ流れです。
溶血性黄疸、溶血性貧血
血液中には赤血球があり、その赤血球には「ヘモグロビン(血色素)」という酸素を運ぶ役割をもつ蛋白質があります。
血が赤いのはこの「ヘモグロビン(血色素)」の色素の色です。
赤血球は古くなると脾臓に運ばれて分解されます。
赤血球の中にあるヘモグロビンも分解され(非抱合型)ビリルビンとなります。
この非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)は、水に溶けにくい状態のため肝臓で水に溶けやすい状態(抱合型ビリルビン=直接ビリルビン)となって、胆汁に出される、という流れです。
で、溶血といって、赤血球が壊れている状態だと脾臓以外でも赤血球が壊れています。
結果、ビリルビン(非抱合型=間接の方)が増え、そして、ウロビリノーゲンが増える、という流れです。
新生児で黄疸(ビリルビンが増える事)になる「新生児黄疸」も赤血球が壊れて非抱合型ビリルビン(=間接ビリルビン)が増えるタイプです。
腸閉塞、過度の便秘
これは先程の「腸肝循環」を思い出せば分かりやすいかと思います。
腸の中のものがずっといるためウロビリノーゲンが腸からいっぱい吸収されます。
その結果、尿中ウロビリノーゲンも増える、という事です。
以上、尿は正常でも泡が立つ!、でした。