今回はインスリン分泌量の測り方について。
糖尿病の方は、インスリンがどれくらい出ているか調べた事はあるでしょうか?
インスリン分泌量の目安となるのは、大きく2種類、「インスリン自体」と「Cペプチド」というものがあります。
血中インスリン濃度(IRI)
血中インスリン濃度は、検査結果では通常、「IRI(immunoreactive insulin)」と表記されます。
immunoreactive:免疫反応性の
insulin:インスリン
という事です。
これは検査が「酵素免疫測定法」など、免疫学的に量を調べる方法をとっていて、インスリンの前段階の「プロインスリン」やその他のインスリンを作る途中のもの(中間産物)も一緒に測ってしまう事からきています。
検査で測っているものが「正確にはインスリンだけではない」ことから、区別してIRIと呼ばれています。
採血でIRIを測定します。
そのままIRIで評価しても良いですし、計算で数値を出してから評価する方法もあります。
計算して出す「インスリン分泌能力」の目安は、「HOMAーβ」と言います。
HOMAーβ(読み方:ほーまべーた)
「空腹時の血中インスリン濃度」と「空腹時の血糖値」を併せて調べると、計算で「HOMA-β(ほーまべーた)」という数値が出せます。
※「空腹時」というのは10時間以上、飲んだり食べたりしていない状態です。(水などはOK、ジュースなどはNGです。)
HOMA-β
=360×空腹時インスリン値(μU/mL)/(空腹時血糖値(mg/dL)-63)
基準値:40〜60
空腹時血糖値130mg以下なら信頼度が高い。
ついでに、「空腹時のインスリン濃度」と「空腹時の血糖値」から「インスリンが効きづらさ」の数値も出せます。
HOMA-R(ほーまあーる)といいます。
HOMA-R
=空腹時血糖値(mg/dL)×空腹時インスリン値(μU/mL)/405
1.6以下が正常、2.5以上は抵抗性あり。
空腹時血糖値140mg以下なら信頼度高い。
で、このHOMA-βもHOMA-Rも「空腹時血糖値が高めだと信頼度が低い」となります。
という事で、空腹時血糖値が高い場合には、アテになりません。
Cペプチド
「血中インスリン濃度」は、インスリンを皮下注射している方だと「その打ったインスリン注射分」もカウントしてしまいます。
「インスリン皮下注射をしている人」のインスリン自己分泌能力はどうやって調べるのでしょうか?
それは「Cペプチド」というのを調べます。
「Cペプチド」は、インスリンを作る途中でできるものです。
アミノ酸の鎖を上図のようにくるっと1周させて重なり合う所をつくり、最後に鎖を切ってインスリンは完成します。
この重なりあう鎖の部分をA鎖、B鎖と呼びます。
で、残りの捨てるだけの部分を「Cペプチド」と呼びます。
Cペプチドの「C」はここから来ています。
「Cペプチド」は捨てるだけの部分で、尿にそのまま排出されます。
インスリンの元:A鎖ーB鎖ーC鎖
↓
インスリン(A鎖ーB鎖) + Cペプチド
このCペプチドの量は、インスリンを皮下注射している場合でも影響されず測定できます。
自分の膵臓でインスリンを作っている分だけCペプチドもできます。
このため、「例えインスリン注射を打っていても」、Cペプチドの量を測れば、どれくらいインスリンを自分の膵臓で作っているか分かる、という事です。
Cペプチド、血中か尿中か
Cペプチドの測り方は2つあります。
血中インスリン濃度のように、血中のCペプチドを測る場合。
あとは、尿にそのまま出るため尿中のCペプチドを測る場合があります。
1日にどれくらいインスリンを作っているかは、1日の尿を全部集めて、その中の「尿中Cペプチド」を測れば分かります。
これを「24時間蓄尿の尿中Cペプチド」といいます。
家ではできないので、基本は入院中にする検査です。
ちなみにCペプチドも検査結果では、「CPR(C-peputide immunoreactivity)」と表記されます。
(注:炎症反応の数値のCRPと超紛らわしいですね)
これもIRIと同じで免疫学的な方法で測定していますよ、という事ですね。
Cペプチドは、インスリンと違って中間産物みたいなものはないのでCペプチドのみを測れます。
という事で、インスリン分泌量の測り方について、でした。