ケトン体

薬やサプリで尿中ケトン体が!

今回は薬やサプリで尿中ケトン体が偽陽性になる事ついて。

 

助手くん
助手くん
ハカセ!尿中ケトン体は血中ケトン体値とズレるだけじゃなく、「偽陽性」にもなるんですか?
ハカセ  
ハカセ  
その通りじゃ・・・だからあまり尿中ケトン体の測定はアテにならんのじゃよ。

 

 

SH基を持ってる薬とサプリで

 

結論から言うと、「SH基を有する薬とサプリで尿中ケトン体は偽陽性」になります。

SH基は、別名がめっちゃいっぱいあり、
「チオール基、スルファニル基、水硫基、スルフヒドリル基、メルカプト基」
これらが全てSH基の別名です。

多すぎ・・・。

名前の通り、「S:硫黄」1原子と、「H:水素」1原子が、分子の端っこにあるという「超シンプル」な構造です。

この構造があるものの多くが「特異的な悪臭」を持ちます。

都市ガスがガス漏れした時にすぐに分かるように微量添加されているのも、このSH基をもつ物質です。

 

SH基を持つものでなるのは、あくまで「偽陽性」です。

実際には尿中ケトン体は出ていないのに検査ではケトン体が見かけ上、陽性になってしまう、という事です。

 

色々あるので有名どころのみ取り上げます。

 

 

 

偽陽性になるSH基をもつものたち

 

薬では、下記のものがあります。

 

カプトプリル(カプトリル)

降圧剤で、「ACE阻害薬」という種類の代表的な1つ。
安いお薬のため海外では良く処方されますが、
日本では主にARBという、ACE阻害薬に似た「お高い」
降圧剤が処方されています。

これはACE阻害薬に空咳(からぜき)の副作用があるため、と
製薬会社のARB押し(=その薬を売りたい)のためです。

チアマゾール(メルカゾール)

甲状腺機能亢進症の治療薬。
上がりすぎた甲状腺ホルモンの数値を下げてくれます。

 

カルビマゾール(ネオ・メルカゾール)

名前の通りメルカゾールと同じく甲状腺機能亢進症の治療薬。
上がりすぎた甲状腺ホルモンの数値を下げてくれます。

作用時間が長く、嘔吐や食思不振などの副作用が少なく、
プロピオチオウラシル(PTU)の10倍以上の効果がある、
などという効果が宣伝されています。

 

チオプロニン(チオラ)

肝臓を保護したり、重金属・特に水銀の解毒効果のある薬。

保険適応は、
「初期老人性皮質白内障」
「水銀中毒時の水銀排泄増加」
「慢性肝疾患における肝機能改善」
「シスチン尿症改善」
の4つ。

 

グルタチオン(タチオン)

内服と注射、そしてサプリメントがあります。

内服と注射に共通する保険適応は
「薬物中毒、妊娠高血圧症候群、妊娠悪阻、アセトン血性嘔吐症」。

で、さらに、内服と注射で保険適応が違います。

内服のみ「金属中毒」

注射のみ「慢性肝疾患の館機能改善、急性・慢性湿疹、皮膚炎、蕁麻疹、リール黒皮症、肝斑、炎症後の色素沈着、角膜損傷の治癒促進、放射線による白血球減少症、宿酔、口腔粘膜の炎症」

という事で、注射の方が圧倒的に使いやすいという薬。
色々と効きます。

保険適応はありませんが、パーキンソン病にも使われます。
パーキンソン病のグルタチオン療法というものです。

実際にグルタチオン療法を行った患者さんがいますがその方は著効していました。

振戦(ぷるぷる体が震える)や、無動(動きが少ない)などが目に見えて改善しました。

とはいえ、パーキンソン病の患者さんでも全員が著効するわけでないようです。

 

メタルカプターゼ(ペニシラミン)

抗リウマチ薬。
無顆粒球症などの血液作れない的な副作用に要注意な薬。
劇薬「的な」イメージの薬。

最近ではあまり処方されなくなってきています。
他にも、「鉛・水銀・銅中毒」に保険適応があり、保険適応はないですが、「強皮症」にも処方されます。

イミペネム(チエナム、IPM/CS)

カルバペネム系抗生物質という強いタイプの抗生物質。
チエナムという商品名(薬剤名)で有名です。

カルバペネム系としては古めの薬剤です。

強い抗生剤なので重症例に使いますが、最近では耐性菌が増えていて、あまり効かなくなってきている印象の薬剤です。

 

α-リポ酸

ダイエットに利用されているサプリ。

「加齢と共に低下する」
「体内に少量しかなく、食事からも少量しか摂れない」
「ブドウ糖を素早くエネルギーに変えてくれる」
「抗酸化作用と脂肪燃焼作用がある」
「シミやくすみの原因となるメラニン色素の生成を抑える」
「目の水晶体や、肌の糖化を防ぐ」
「体温を上げてくれる」
「デトックス作用がある」
等々の、何か凄い効果ありそうな感じで宣伝されています。

実際に飲んだ事がある方も結構いるかと思います。
ビタミンB群などにセットで含まれている事もよくあります。

 

L-システイン(ハイチオール)

シミや二日酔いに効くというサプリ。

まさにSH基の作用でこの効果があり。

SH酵素にSH基を供給することで、エネルギーの発生を促進させて、
全身倦怠感などを改善させてくれます。

ハイチオールは、私もたまに飲み過ぎの時にお世話になっています。
知り合いの医師も飲み過ぎの時に、ハイチオールを飲んでます。

 

シリマリン(生薬 マリアアザミ)

シリマリンは、グルタチオンの前駆体です。

つまり、シリマリンが吸収されると体の中で「グルタチオン」になる、という事です。

という事で作用等は上の薬剤の部分に書いた「グルタチオン」と同じです。

「マリアアザミ」というのは北アメリカ原産の植物の事です。


キレイな感じの花ですね。

以上、SH基を有する系の有名どころを取り上げてみました。

このSH基を有する薬剤・サプリは他にも色々とやらかしてしまうのでそれは別の記事で書こうと思います。

該当するものはありましたでしょうか?

 

以上、尿中ケトン体だけが多い!でした。

ABOUT ME
医師水野
内科医。2003年に医師免許取得(医籍登録)。 両親とも糖尿病家系。2度肥満だった自らの体の劇的な変化をきっかけに、糖質制限を中心とした治療を開始。 その後、糖質オフやビタミン・ミネラルなどの情報をブログ、Facebook、YouTubeなどで発信。 監修本「糖質オフ大全科 (主婦の友社)」が中国でミリオンセラーに。 著書は「糖尿病の真実~なぜ患者は増え続けるのか~ (光文社新書)」「1年で14キロ痩せた医師が教える 医学的に内臓脂肪を落とす方法(エクスナレッジ)」「薬に頼らず血糖値を下げる方法(アチーブメント出版)」、など。