今回は糖尿病じゃなくても尿に糖が出る?について。
まずは糖尿病っで尿に糖が出る、から。
糖尿病で尿糖が出る。
これは皆さん、知っているかと思います。
病名の通りです。
血液中の糖が多すぎて尿にあふれ出る、という事です。
ちなみにこの「血液中の糖が多すぎる」というのは、血糖値が170mg/dLくらいを言います。
つまり、血糖値170以上だと尿糖が陽性になってきます。
糖尿病じゃないのに尿に糖が出る?
では、やっと今回のテーマ。
糖尿病じゃないのに尿糖が陽性になる場合があるのでしょうか?
つまり、血糖値が正常なのに尿糖が出てしまう、という場合はどんな状態でしょうか?
これは尿を作っている腎臓に異常がある場合です。
これを腎性糖尿と言います。
注)糖尿「病」ではなく「糖尿」です。
腎臓で糖がきちんと処理できないので尿に糖質が漏れてしまう、という状態です。
腎臓に異常がある時に、尿に糖が出てくる。
この腎性糖尿は糖尿病ではありません。
体質の1つ、とでも思っておけば良いもので健康への良くない影響などもありません。
とはいえ、毎回、健康診断で「尿糖陽性」と引っかかります。
血糖値やHbA1cなどでチェックしていけば大丈夫です。
また、むくみやダルさがある場合は腎臓の病気が隠れている事がありますので医療機関に行くと良いでしょう。
血糖値170以上でナゼ、尿に糖が出るの?
以下、その詳細を順に見ていきましょう。
尿が出来る場所
腎臓はこんな感じで左右に1つづつある臓器です。
色々な事をしていますがメインの機能として尿を作っています。
血液から尿を作っているので動脈も静脈もいっぱいで血液の流れも多い臓器です。
血管だらけです。
その中でも尿を作る部分をクローズアップします。
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挿絵的だと、こんな感じです。
腎臓の外側辺りの部分の拡大図です。
赤い線が動脈。
動脈から血液を濾しとって(こしとって)尿の元(=原尿)を作ります。
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CGにするとこんな感じ。
動脈の先が糸みたいにぐるぐる巻き状態(この部分を「糸球体」と言います)になった所で、尿の元を作ります。
黄色い部分が「尿の元」(原尿と言います)が流れていく部分です。
立体にするとこんな感じ。
腎臓にはこういう部分(ネフロンと呼びます)が1個の腎臓あたり100万個ほど詰まっているという事です。
尿の作り方
下水処理場の仕組みに何となく似ています。
最初に大雑把に処理して後で細かく色々と調整する、みたいな感じです。
尿を作る時は、まずは細かいものはどばーっと「尿の元(原尿)」に出してしまいます。
とりあえず、尿の元を作る!みたいな感じです。
そして後から必要なものを再度、吸収し直します。
これを「再吸収」と言います。
そう、皆さん気づいたように糖も一旦、尿の元として出されますが再吸収されます。
この再吸収がきちんと出来ないと吸収しきれなかった分の糖が尿に出ることになります。
これが腎性糖尿です。
どうやって再吸収してるの?
この再吸収にはSGLTというポンプを使います。
SGLT
sodium glucose cotransporter(sodium glucose transporter)の略。
日本語だと「ナトリウム・グルコース共役輸送体」。
このSGLTというポンプは血糖値が170mg/dLくらいの状態までしか糖を再吸収する力がありません。(より正確には160〜180mg/dL)
ですので、血糖値が170mg/dL以上になると尿糖が陽性になります。
また、SGLTが生まれつき(遺伝的に)弱い場合がありその場合が腎性糖尿となります。
糖の再吸収があまりできないため、尿糖が出てしまいます。
ただし、SGLTの異常だけでなくこの尿を作り出す部分の病気がある場合も尿糖陽性になります。
そういった病気には、尿細管障害や間質性腎炎などがあります。
これらの場合は腎臓に詳しい内科医などに診てもらう必要があります。
以上、糖尿病じゃなくても尿に糖が出る?、でした。