今回は多血症について。
なお、多血症と鉄欠乏についはコチラ。
多血症の種類
さて、「多血症」は色々な病気や状態をひっくるめた病名です。
大きく分けて3パターンあります。
骨髄という所で赤血球を作り過ぎちゃう「真性多血症」。
赤血球は増えていないけど濃度がこくなる「相対的多血症」。
骨髄に異常はないけど赤血球が増えちゃう「二次性多血症」。
では、順に説明しましょう。
一番有名ドコロ、「真性多血症」
通常、「多血症」とだけ言った場合に指しているのは「真性多血症」というものです。
これは白血病を考えると分かりやすいです。
白血球を作りすぎるのが「白血病」。
赤血球を作りすぎるのが「真性多血症」。
真性多血症の場合、増えた赤血球自体は正常か正常に近いものであることが多いです。
「増えすぎる」事自体が問題です。
なお「血球」には3種類あります。
白血病、赤血球、血小板、の3つです。
もちろん、この血小板が増えすぎる病気もあり、「本態性血小板血症」という名前です。
名称に統一感がありませんね。
こういう場合は、未来には病名が変わるかもしれません。
さて、このように病名は簡単に言えば何が増えるか?という事で決まります。
特定の細胞が増えるのは癌と同じなので「血液のがん」と言われます。
「癌」と漢字で書く場合は上皮細胞から発生する「悪性腫瘍」の事です。
血液の細胞は「上皮性」ではないので、血液の悪性腫瘍とか、血液の「がん」(ひらがな表記)などと言われます。
さらに「がん」について詳しく知りたい方はコチラ。
またこの血球を作るのは骨の中にある「骨髄」です。
その骨髄の所で、血球が増えるのでまとめて「骨髄増殖性疾患」と言われています。
という事で、癌のように赤血球が増えまくるのが「真性多血症」でした。
真性多血症の症状
増える赤血球が正常かそれに近いものでも増え過ぎると困ったことが起こります。
血液がドロドロになり血管が詰まります。
頭痛、めまい、ほてり、のぼせ、耳鳴り。
赤ら顔、高血圧。
脳梗塞、心筋梗塞。
脾臓が腫れる(脾腫)、
指先が赤くなって痛くなる(先端紅痛症)。
色々な事が起こってきます。
真性多血症の治療
治療は「瀉血(しゃけつ)」と言って血液を取って捨てる事です。
あとは、化学療法(抗癌剤)や、抗血小板薬(いわゆる血液サラサラの薬)などがあります。
真性多血症は白血病の親戚みたいな病気ですが、実際に途中で白血病になってしまう事もあります。
また、骨髄が頑張り過ぎな状態なので疲れ果てて逆に血液が作れなくなる「骨髄線維化」という状態になる事もあります。
年間に発症するのは10万人あたり、0.2〜2人くらいと稀な病気ではあります。
赤血球は増えていない「相対的多血症」
赤血球の数は「濃度」で測られます。
つまり、赤血球自体が増えていなくてもそれ以外の液体の成分「血漿(けっしょう)」が減ってしまうと赤血球の「濃度」が濃くなります。
この濃度だけ上がっている状態を「相対的多血症」といいます。
多くは脱水などでおこりますので、治療は元の異常の方を治療します。
原因は、
水分を摂っていない
嘔吐・下痢
多量の発汗
利尿剤(尿を出す薬)、
尿崩症(尿が出まくる病気)
糖尿病(尿に糖が出るために、糖に引っ張られて水分も尿に出る)
精神的ストレス
喫煙
などなどです。
赤血球は増えるけど、原因は別にあるよ、な「二次性多血症」
真性多血症は「骨髄で赤血球を作り過ぎちゃうよ」という状態。
相対的多血症は「赤血球自体は増えず、濃度が増える」状態でした。
今度は、「赤血球が増えるけど、骨髄が異常ではないよ」という「二次性多血症」です。
では、なぜ、赤血球が増えてしまうのでしょうか?
ひとつは、必要だから増える、という状態です。
赤血球は酸素を運びます。
その酸素が不足するような状態でこの「二次性多血症」は起きます。
これを「酸素欠乏性多血症」といいます。
そのまんまですね。
原因は、
・標高が高い所で生活している人、
・慢性気管支炎や肺気腫のように肺の異常がある人、
・常に大量にタバコを吸っていて一酸化炭素でやられている人(一酸化炭素ヘモグロビン症)、
などがあります。
酸素が欠乏していなくても「二次性多血症」になる場合もあります。
これは癌などが造血ホルモン(エリスロポエチン)を分泌しまくっているような場合です。
以上、多血症について、その2でした。