ビタミン・ミネラル

「ビタミンがヤバい」論文

今回は「ビタミンがヤバい」論文がヤバい、について。

 

いきなり最初に結論です。

ビタミンがヤバい論文は全スルーでOK

 

なぜなのか、順に見ていきましょう。

 

ビタミンが効くというエビデンスは無い、永遠に

 

よく目にするのは、
「ビタミンが効くというエビデンスは無い!」
というもの。

そりゃそうです。

ここで言う「エビデンス」とは
(主語は省略)が認めている権威ある科学雑誌に載っている論文
の事です。

それ以外のいかなる所に掲載されていようと
「エビデンスではない」
となります。

内容がどう、ではありません。

その科学雑誌に載っているかどうか?です。

どれだけ立派な論文であっても、
きちんと設計されて実施されて論文化された研究であっても、
それらの科学雑誌に載っていなければ、エビデンスとは言われません

 

そんな載ってないけど良い論文ってあるの?といば、
実は沢山あるんです・・・。

 

エビデンスとは
(主語は省略)が認めている権威ある科学雑誌に載っている論文の事。

 

そして、そのような科学雑誌に
「ビタミンが効く」という論文が掲載される事はありません、永遠に

 

掲載されればエビデンスとなる科学雑誌に
「ビタミンが効く」論文が掲載される事は永遠に無い

 

つまり、「ビタミンが効く」というエビデンスは永遠に出てこない、という事です。

論文が載らないのですから。

 

「論文が載っていない」=「エビデンスは無い」
という事です。

 

「ビタミンが効く」というエビデンスは永遠に出てこない

 

なぜ、掲載されないのか?はここでは省略します。

「そういう事があるんだね」という事をお見知り置きください。

 

なお、
「(主語は省略)に、認められていない科学雑誌」には
数多くの論文が載っています

ビタミンが効く、という論文はあるんです

ですが、それはエビデンスとは言われません。

なぜなら、単純に「(主語は省略)に、認められていない科学雑誌」だからです。

 

 

ビタミンが効かない・ヤバいという論文は今後も増える

 

「エビデンスは無い」の逆で、
積極的に「効かない」「ヤバい」という論文は今後も出てきます

なぜなら、そういう論文は
(主語は省略)が認めている科学雑誌に掲載されるからです。

「論文載ってる」=「エビデンスがある」です。

内容を見るとショボいか、ちゃんとしているか、は関係ありません。

 

(主語は省略)が認めている科学雑誌に
論文が載っている時点で「内容も大丈夫!」的な雰囲気になっています。
(査読、というチェックされてから掲載されるので)

 

 

有名なメイヨークリニックの「ビタミンC無効」論文

 

有名どころでは、メイヨークリニックの「ビタミンCは効かない」論文です。
(N Engl J Med 1979;301:687)

 

全世界的に有名な超一流の科学雑誌
超一流の研究者が発表した論文ですので
「ビタミンC効かない」の根拠として
今でも常に引用されまくっています

 

メイヨークリニックの「ビタミンC無効」論文は
今でも超引用されている

 

これは1979年に出された論文で、
「末期がん患者にビタミンCを投与したが効果無し」というものです。

そのビタミンCの投与方法は「経口投与」です。

そして、末期がんに効果を出そうとするなら、
「経口投与」だけでは無理があります。

 

というのも、ビタミンCを口から飲んでも、
血液中のビタミンCの濃度はさほど上がらないからです。

 

さらには、
口から摂るビタミンCの量を増やせば増やすほど、
吸収率は下がってしまいます。

具体的には、
ビタミンCは、30~180 mg/日の摂取量では、その約70%~90%が吸収され、
1 g/日 を上回る摂取量では、吸収率が50%未満に低下する
と言われています。

このメイヨークリニックの論文では1日10gのビタミンCを経口投与していますが、半分も吸収されていない、という事です。

 

末期がんに効果を挙げようというなら、
ビタミンCを直接、血管の中に入れる必要があります。

いわゆる「高濃度ビタミンC点滴」というものです。

こちらは効果があります。

もちろん、
ビタミンC点滴の持続時間は短いので、
ビタミンCの経口摂取と併用するとさらに効果があります。

経口投与と静脈投与では血中濃度に数十倍の違いがあるので効果も違ってきます。

 

経口投与と静脈投与では血中濃度に数十倍の違いがある

 

しかしながら、「高濃度ビタミンC点滴」にはエビデンスがありません

効果があるという論文はめっちゃあります。

きちんとその効果を調べて論文化されているものは数多くあります

 

ですが、「(主語は省略)が認めた科学雑誌に論文が載らない」のでエビデンスではありません。

単純にその雑誌に論文が載らないので、エビデンスとは認められていません。

 

(主語は省略)が認めている科学雑誌に
載っていない論文はエビデンスとはされない

 

「メイヨークリニックのビタミンC論文」が意味無いというなら、
ビタミンCが効くというエビデンスを作れ
という主張があります。

これについては
「(主語は省略)が認めた科学雑誌に論文が載らない」ので
そういうエビデンスが出来る事はありません、永遠に

既にきちんとした論文は数多く書かれています。
そちらを見ればよい、という話です。

 

上記のような前提があるので
ビタミンに対して「エビデンスを出せ」と言ってきたら
その時点で色々と「お察し」です・・・。「本気か?!」的な。

知ってて言ってるなら、まだいいんですが・・・。

 

 

 

最近話題になったかもしれない論文

 

線虫でビタミンの研究とかは、
「線虫で」という段階で「無茶してますね・・・」という話ですので
余裕でスルー可です。

タイトルだけでツッコミを入れるレベルですね。

 

「線虫でビタミン無効!」と言われてもね・・・という。
「あ、そういうの間に合ってます」と即、お断りするレベルです。

 

線虫とヒトでは色々と違いがありすぎて、
ヒトには全く適応できません

 

哺乳類ならどうでしょうか?

豚さんにビタミン有害の論文もあります。

 

「ブタでビタミン有害」の論文とその雑誌のIF

 

論文の概略はコチラを。

 

論文の英語「原文」はコチラを。

 

この論文が載った「Hypertension」という医学雑誌は、
高血圧関連の医学雑誌ではトップ3に入るほどの権威のある医学雑誌です。

医学雑誌の格付けは「IF(インパクトファクター)」というもので示されます。

一流雑誌では6とか7とかになります。
中堅どころだと3とか4です。

算出方法などはコチラに比較的わかりやすく載っています。

 

このHypertensionのIFも概ね6〜7という事で余裕で一流雑誌です。

 

 

ブタさん論文の中身

 

では、その論文の内容を見ていきましょう。

論文は2006年に発表されています。

 

利益相反の記載無し

まずは、この年代なので「利益相反」が掲載されていない点はチェックしましょう。

 

利益相反についてはコチラが分かりやすく載っています。

 

たとえば、「日本内科学会」で利益相反について明示しはじめたのは
「平成22年(2010年)」の事で、最初の2年は試用ですので、
本格的な実施は2012年からでした。

(「2.日本内科学会の利益相反(COI)指針に関して」の5番目部分に記載)

 

利益相反が載っていない事自体は時代的なものなので、
「まぁ、少し昔だからね・・・」
という事です。

以前は利益相反を載せない方が当たり前でしたので、
そういう時代に発表された論文、
というだけの事です。

 

 

対象の数が2群で違う

 

この研究では、「ビタミンCとEを投与した群」と「投与しなかった群」にブタを分けて調べています。

しかしながら、
「ビタミンCとEを投与した群」が6匹、
「投与しなかった群」は7匹、
と数に違いがあります。

百とか千の対象を調べたなら多少の数のズレは仕方がありませんが、
わずか数匹の対象で数が違うのはちょっと・・・という。

当然ながら、
1匹数が違うから、ろれだけでこの論文が無効、というわけではありません。
が、こういう所でも「センス」や「真剣さ」の違いが出ます・・・。

 

そう、コレだけで即アウト!、というものではありません

 

 

対照群の数が少ない

 

6匹とか7匹で「有意差が!」とか言われましても・・・。

「有意差」というのは「ハッキリ分からないけど統計処理すると違いがある」という、いわば「ほんのちょっとの差」です。

ですので、「有意差が!」とか言う場合には、せめてもうちょっと数を揃えて頂きたいところです。

 

少数の対照群で効果に違いがある、というならもう少し「ハッキリした違い」を提示したい所です。

1例報告でも「めっちゃ違いがある!」というなら、その論文の価値は高いです。
(一般的には軽んじられますが)

 

そう、これも、ソレだけで即アウト!、ではありません。

が、「重ねてくるねぇ・・・」というヤツです。

 

 

あとブタって・・・

 

ヒトや大部分のサルでは、ビタミンCを体内で作る事ができません

そして、一方で、ブタやウシではビタミンCを体内で作る事が出来ます。

繰り返します。

ブタはビタミンCを体内で作る事が出来ます

 

ビタミンCの研究をするなら、せめて
ビタミンCを作れない動物で研究してください・・・。

 

ブタはビタミンCを体内で作る事が出来る。

 

コレも、だからブタとビタミンCの論文がすべて価値が無いか、というとそうではありません。

が、そのチョイスの時点で「センスが・・・」というお話。

 

ブタでビタミンCの研究をする研究者なら、
ブタがビタミンCを体内で作れる事を知っています
(知らないなら知らないでヤバいですよね】

「その上で、ブタを選ぶかぁ・・・」という事です。

ビタミン無効論文はそんなのばっかりです・・・。

 

そして、「重ねてくるねぇ・・・」というヤツです。

 

研究者の意図がすごく見えてきますね・・・。

 

もう、ツッコミもめんどうになってきました。

あと2点ほどツッコんで終わりにしましょう・・・。

 

心機能評価を造影CTで行っている

 

これもソレだけで論文の価値無し、ではないんですが、
「造影CTを選ぶかぁ・・・」
「重ねてくるねぇ・・・」

という同じパターンです。

心臓のようなずっと動いてて止まっていない臓器
CTのニガテなタイプです。

せめて心臓の血管「冠動脈(かんどうみゃく)」なら、
64列以上の高機能CTで造影すれば、
「血管のが詰まっているかどうか」は分かります。
(最近では320列なんていう超高機能CTもあります)

 

しかしながら、「心機能」という「心臓の動き自体を見る」
となると、「造影CTには荷が重い」というオハナシです。

 

また、この論文の発表が2006年なのでCTの性能もお察しです・・・。

 

なお、ちゃんと心臓の機能(動き)を見るなら、超音波一択です。

 

最後に1つツッコミを入れて終わりにしましょう・・・。

これだけツッコミ所があれば充分でしょう。

 

ビタミンEを「dl体」で投与している

 

ビタミンEには種類が8種類あります。

「d体」か「dl体」か、の2種類と
「α」、「β」、「δ」、「γ」か、の4種類の組み合わせなので、
2x4=8種類
となります。

この中でも活性(効果の強さ)が高いのは、
「d体」の方です。

最強は「d-α-トコフェロール」となります。

この論文では、活性の高い「d体」ではなく、
なぜか「dl体」が投与されています。

なぜなんでしょうね・・・。

またしても
「ソレを選ぶかぁ・・・」
「重ねてくるねぇ・・・」
という流れ。

 

という事で、この点も、
また「お察し案件」ですね・・・。

それだけで即アウト、ではないんです。

 

しかし、積み重ねてきてますね・・・(お察し)。

 

そんなのばっかりです・・・。

 

再び結論

 

という事で、

ビタミンには永遠に「効果のある」というエビデンスはできませんし、

ビタミンがヤバい論文は「お察し案件」なので全スルーでOKです。

 

あとは、こういう論文や背景を知ってて引用してるなら
「あ、分かっててそうなのね・・・」
という事ですが、そうでない場合は
「え?本気で?」
っていう感じで、色々と厳しいものがありますよね・・・。

えぇ、色々と・・・。

 

 

最後に

 

最後に敬愛してやまない某先生のブログから引用しましょう。
まさにどストライクな事が書いてあります。

 

 

(毒舌注意)、ダメ医者の見極め方

1)エビデンス医者

論文は玉石混淆といえば聞こえがよいが、実際は玉石石石石石混淆

99%は「スポンサーバイアス」のかかったインチキ論文

だから、自分の妄想理論にかなう論文だけ拾い出して理論をつくると、どんな理論でも作れてしまう

論文の最後にあるacknowledgmentにはその論文のスポンサー名が書いてある。

ほとんどの論文はメガファーマなどのスポンサーがついている

かつて、MRの面会を許可していた頃、”先生、こんな論文があります”と英語論文を持ってきていた。

acknowledgmentだけ読み、そこの製薬メーカーの資金援助付きだと分かり、ごみ箱直行。

論文なんか読むのは全くの無駄なので自分は一切読まない。

自分で治した症例を提示できない理論はインチキ

そう言えば、”フェリチン100を目指すのは危ない”と言っているスットボケもいた

 

(中略)

 

3)MEDLINE医者

MEDLINEで勉強していますと言う医者も多い。

しかし、MEDLINEは「パブリケーションバイアス」が極めて大きい

メガファーマに援助された”ビタミンは効果がなく危険である”と言う論文が山ほど載っている

”ビタミンは効果があり安全である”との多数の論文が掲載されているオーソモレキュラー医学雑誌(JOM)はMEDLINEに索引付けされていない

そう言えば、”ビタミンCとビタミンEを飲むと寿命が短縮する”等と平気な顔をして言うスットボケもいた

MEDLINEではなくJOMを全て読め

(上記引用部分の強調表示は水野による)

 

スッキリとする、バッサリ具合ですね。

 

なお、「こてつ名誉院長のブログ」にある「これ系の記事」
ブログ・テーマ「医学会」でお楽しみ頂けます。

控えめに言っても最高ですね・・・っっ!!

 

以上、ビタミンがヤバい論文について、でした。

ABOUT ME
医師水野
内科医。2003年に医師免許取得(医籍登録)。 両親とも糖尿病家系。2度肥満だった自らの体の劇的な変化をきっかけに、糖質制限を中心とした治療を開始。 その後、糖質オフやビタミン・ミネラルなどの情報をブログ、Facebook、YouTubeなどで発信。 監修本「糖質オフ大全科 (主婦の友社)」が中国でミリオンセラーに。 著書は「糖尿病の真実~なぜ患者は増え続けるのか~ (光文社新書)」「1年で14キロ痩せた医師が教える 医学的に内臓脂肪を落とす方法(エクスナレッジ)」「薬に頼らず血糖値を下げる方法(アチーブメント出版)」、など。