今回は緩徐進行1型糖尿病について。
1型糖尿病と2型糖尿病について
1型糖尿病とは、何らかの原因で
自分の膵臓からインスリンが出なくなる病気です。
このため、毎日のインスリン注射が欠かせません。
インスリン製剤が発売されるまで発病すると半年で命を落としていた疾患です。
現代ではインスリンの自己注射により、即命を落とす事はなくなりました。
2型糖尿病は、1型糖尿病とは違い、まだインスリンを自分の膵臓から出す事ができます。
緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)って?
そして、2型糖尿病の人が途中から1型糖尿病へと変わっていってしまう状態があります。
それが「緩徐進行1型糖尿病」です。
英語では
「slowly progressive insulin-dependent diabetes mellitus」
略して、
「SPIDDM」と言います。
SPIDDMには診断基準があり、下記のようになっています。
日本糖尿病学会、緩徐進行1型糖尿病の診断基準(2012)
【必須項目】
1.経過のどこかの時点でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体もしくは膵島細胞抗体(ICA)が陽性である。a)
2.糖尿病の発症(もしくは診断)時、ケトーシスもしくはケトアシドーシスはなく、ただちには高血糖是正のためインスリン療法が必要とならない。b)
判定:上記1、2を満たす場合、「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)」と診断する。
a)Insulinoma-associated antigen-2(IA-2)抗体,インスリン自己抗体(IAA)もしくは亜鉛輸送担体8(ZnT8)抗体に関するエビデンスは不十分であるため現段階では診断基準に含まない。
b)ソフトドリンクケトーシス(ケトアシドーシス)で発症した場合はこの限りではない。
という事で、簡単に言えば、
GAD抗体とICA抗体を測って診断をします。
どちらかの抗体が陽性ならSPIDDMと診断される方向です。
ただし、ICA抗体は保険が効かず、1万円以上かかります。
検査会社に払う実費だけでも1.5万円はします。
実際の費用は、自由診療の範囲となり
保険適用外ですので医療機関や検査会社によって値段は様々です。
ですので日常診療で測定されているのは、ほぼGAD抗体のみです。
このSPIDDMの場合は、1型糖尿病とは違って、
まだ膵臓のβ細胞が全滅しておらず、
インスリンが自分の膵臓β細胞からそこそこインスリン出ている状態です。
1型糖尿病になるのにリーチがかかっていますが、
今はまだ実質的には2型糖尿病の状態、というのがSPIDDMです。
SPIDDMの進行を止められるのか?
SPIDDMから、1型糖尿病への進行を止める方法はあるのでしょうか?
当初この元記事を書いた時点(2015年6月)には、そんな方法はありませんでした。
糖質をオフして、進行をゆっくりにしましょう、というのが元記事でした。
しかし、その後、福島県で開業されている「新井圭輔」先生より
スプラタスト
という薬剤によりSPIDDMのGAD抗体を消す、という治療を教えて頂きました。
GAD抗体を、インスリン分泌能力が残っている間に消せれば、SPIDDMを通常の2型糖尿病にする事ができます。
スプラタストによる治療は元々は成人で1日300mgの量でしたが、
私は倍の1日600mgを投与する事で、
GAD抗体を下げる確率を上げました。
そしてそれ(倍量投与での治療)を
「糖質オフ・スプラタスト療法」
と命名しています。
また、スプラタストがなぜSPIDDMに効果があるのか?を
「かるぴんちょ」先生が考察してくださいました。
「IPD」というのは「スプラタスト」の商品名です。
「スプラタスト」が薬剤の有効成分の名前です。
その後さらにビタミン等を取り入れた治療を行っていました。
糖質オフ・スプラタスト療法は結局、効くの?
なお、治療効果については「医療広告規制」の対象となるため、ブログで公表する事はできません。
公表した場合には、医療法に違反となります。
厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」
糖質オフ・スプラタスト療法の内容
治療の方針はおおまかに以下のようになっています。
・糖質オフ、できれば断糖レベル(1食の糖質5g以下)
・スプラタストを1日600mg(抗体が消えるのに年単位かかります)
・ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB3(ナイアシン)の摂取
糖質オフ・スプラタスト療法の難しい点
スプラタストは内服していも、ほぼ全く効果を実感する事はありません。
アレルギーに対する薬なので、アレルギーの症状がある人は数ヶ月飲んでいる間には少しかるくなるかも?、という程度です。
このため「何年も」、効いているのかどうかまったく何も感じないまま、ひたすらに1日600mg飲み続け、時々、GAD抗体を測定する、という感じになります。
また、1日600mgは最初に書いたように「通常量の倍量」ですので、継続的に処方してくれる医師はほとんどいません。
これらの点が、「糖質オフ・スプラタスト療法」のネックとなります。
糖質オフ・スプラタスト療法の幸いな点
幸いにしてスプラタストは倍量までは適応疾患と適応となる病態があれば、保険が効きます。
当然ながら、逆に言えば、適応疾患や倍量にする病態がなければ、保険は効きません。また、SPIDDMに対する倍量投与は、そもそも保険適応ではありません。
実際に保険適応となるかは、診察した医師の判断になります。
受診した医師にご相談ください。
また、スプラタストは後発品が発売されており、それほど高い薬剤ではない、という点が幸いです。
さらに、効果が弱いため何年も飲み続ける必要がありますが、その分、副作用もあまり起きず、起きたとしても軽い副作用である事がほとんどです。
これらの点が、糖質オフ・スプラタスト療法の特徴となっています。
症例は?
「とある内科医」さんが症例報告をしています。
以上、SPIDDMを進ませない、でした。