今回は「インスリンの3大慢性リスク」について。
「インスリンの3大慢性リスク」は神戸講演の時(2016年7月3日)に世界で初めて私が言い始めた言葉です。
神戸講演のその部分についてはコチラ。
インスリンの急性リスク
「インスリンの急性リスク」は誰でも知っています。
低血糖です。
インスリンは血糖値を下げるホルモンです。
このため、効きすぎると低血糖になって危ないよ、という事です。
では、インスリンの「慢性リスク」というのは皆さん、ご存知でしょうか?
インスリンの3大慢性リスク
これはあまり知られていません。
インスリンの3大慢性リスクは
肥満
認知症
癌
です。
肥満
肥満は直接的なインスリンの作用によります。
インスリンは栄養を蓄える働きがあります。
ですので、食べ物を脂肪に変え、脂肪細胞に蓄えます。
そして太ります。
アルツハイマー型認知症
インスリンがアルツハイマー型認知症のリスクになるのはご存知の方もいるかと思います。
インスリンが多いと、神経に毒性をもつアミロイドβというものを、分解しづらくなります。
アミロイドβが脳にたまることで脳細胞が死に、脳が縮んでいきます。
糖尿病というだけでアルツハイマー型認知症のリスクは2倍、インスリンを直接打っていると4倍というデータがあります。
癌
癌については、意外に思う人がいるかと思います。
インスリンが体内に多いと肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、乳癌、子宮内膜癌、膀胱癌などの癌のリスクが増える事が分かっています。
これはインスリンに、細胞を増やす働きがあるからです。
眼底出血
眼底出血も同じです。
糖尿病による網膜症では、単純期、前増殖期、増殖期という3つの段階があります。
名前から分かるように「何かが増えていくと病状が進む」という事です。
何が増えているのでしょうか?
これは「新生血管」と呼ばれています。
新しく生まれる血管なんて、良さそうな名前ですよね。
ですが、この新生血管、いわば欠陥商品です。
この新生血管があるために、糖尿病の方は眼底出血や硝子体出血をして目が見えなくなっていきます。
では、なぜこの新生血管が生えてくるのでしょうか?
従来は糖尿病によって網膜の血管が詰まるのでそれを何とかしようと新しい血管が生えてくる、という説明でした。
実際に眼底を見ると詰まっている網膜の血管が見えます。
もちろんそういう面もあります。
ですがきちんとした血管が生えてくれば、何の問題もないハズです。
しかし、異常な血管が生えてきます。
網膜の血管が詰まる病気は色々あるのに糖尿病だけ、このような異常な血管が特徴的に生えてきます。
何故、糖尿病だけで新生血管が特徴的に生えてくるのでしょうか?
先ほどのインスリンの作用を思い出してください。
インスリンの作用のひとつに細胞を増やす作用があります。
網膜の血管を不必要に増やしたらどうなるでしょうか?
きちんとした血管ではない、もろい血管ができ、そこから出血するという訳です。
これがインスリンによる眼底出血です。
インスリン・オフの治療をしている場合、血糖値が高くても眼底出血しない、という報告があります。
実際に私がインスリン・オフの治療を始めてから驚くほど、眼底出血は減りました。
逆に、その前のインスリン治療をしていた頃には、血糖値が良くても眼底出血する例がありました。
糖尿病で避けるべきは「合併症」
糖尿病で怖いのは、血糖値よりもむしろ合併症です。
目が見えなくなる、人工透析になる。
患者さんが恐れるのはそちらの方です。
合併症の予防という点ではインスリンを抑える事が非常に大切になってきます。
インスリンにはリスクがあります。
急性リスクと慢性リスクです。
それをリスクを避けるためにもインスリンはなるべく少ない方が良いのです。
つまりこれからの治療は糖質をオフして、そもそも血糖値を上げない。
そして、薬もインスリンをオフしてインスリンによる急性リスクと慢性リスクを避ける。
これがこれからの糖尿病治療です。
これからの糖尿病治療は糖質オフ、インスリン・オフ。
以上、インスリンの3大慢性リスク、でした。