今回はDPP-4阻害薬などの、
高インスリン血症を起こす薬剤
について。
DPP-4阻害薬について
DPP-4阻害薬は色々な作用がある薬です。
基本的には間接的にインスリンを膵臓のβ細胞から分泌させる事で、血糖値を下げます。
DPP-4阻害薬は、間接的にインスリンを分泌させて血糖値を下げる
DPP-4阻害薬は各社が色々出しており、種類も豊富です。
特徴もそれぞれあります。
最近は、DPP-4阻害薬使用中、HbA1cが低めなのに眼底出血する症例が話題になっています。
まさに、高インスリン血症による臓器障害です。
高インスリン血症によって、臓器が障害される
インスリンがなぜ臓器にダメージを与えるのかは、動画で説明しています。
なぜ眼底出血するのでしょうか?
一般的な眼科では
「血管が詰まるため新しい血管(新生血管)が生えて、そこから出血する」
と説明されます。
つまり「糖尿病で血管が詰まるのが原因」、という説明です。
糖尿病以外にも網膜の血管が詰まる病気はいくつもあります。
しかし、この「新生血管」という「出血しやすい異常な血管」が特徴的に生えてくる病気は糖尿病だけです。
新生血管が生えてくるのは、糖尿病の網膜症だけ。
違いはどこにあるのでしょうか?
またインスリン・オフ療法に治療を切り替えると眼底出血はほとんど起きません。
糖尿病性網膜症自体も改善してきます。血糖値が高くても、インスリン・オフ療法では眼底の状態が改善してきます。
インスリン・オフ療法
これは「血管が詰まる」から「眼底出血する」では説明できません。
違いは「インスリン」です。
インスリンには細胞を増やす作用があります。
癌に対する糖質オフは?
インスリンは癌だけでなく、他の細胞も増やします。
それが網膜の血管の細胞だったら?
異常に増えた網膜の血管ができてしまいます。
これが新生血管です。
そして、インスリンによって無理に増えた異常な血管のため、壁がもろく、すぐに出血してしまいます。
つまり、
インスリンの細胞増殖作用によって
新生血管ができて、そこから眼底出血する
という事です。
糖尿病性網膜症は、高インスリン血症によって進みます。
逆に、高血糖でもインスリン・オフ療法によって改善する例があり、
高血糖自体よりも高インスリン血症の影響の方が大きいのです。
またHbA1cが低めでも尿蛋白が出続ける場合なども、高インスリン血症による臓器障害です。
インスリンによって腎臓が障害される、という事です。
DPP-4阻害薬は、単体では低血糖にならず、HbA1c値もよく下げ、また種類を選べば副作用も少なく、1日1回で良い、など医師からすれば非常に使いやすい薬剤です。
もちろん、今でも他の内服薬がどうしてもできない、などや、認知症でお一人暮らしで、内服の介助が1回しかできない、などといった時には使う場合もあります。
ですが、高インスリン血症を引き起こす薬剤なので、避けられるなら避けたい薬剤です。
SU剤について
SU剤については、DPP-4阻害薬よりも、さらに避けるべき薬剤です。
SU剤もDPP-4阻害薬のように出さざるを得ない時というのはあります。
しかし、避けられるなら避けた方が良い薬剤です。
SU剤は、長時間インスリンを膵臓のβ細胞から出し続ける薬剤ですので
・食べなかったり運動したりすると、問答無用で低血糖になる
・膵臓のβ細胞を酷使するので、β細胞が死んでしまう(減っていく)
という大変大きなデメリットがあります。
急に血糖値を下げると良くない?
また以前より「急激な血糖値の改善が眼底出血を起こす」という事が言われてきていました。
当時は、インスリンやSU剤しかなかった時代です。
インスリンやSU剤で血糖値を無理に下げるということは、インスリンを直に打って高インスリン血症か、SU剤により膵臓から無理矢理インスリンを分泌させて高インスリン血症になる、という事です。
まさに、典型的な「高インスリン血症による臓器障害」です。
糖質オフで血糖値やHbA1cが一気によくなることは、よくありますが眼底出血はあまりしない印象です。
逆にDPP-4阻害薬などではやはりHbA1cや血糖値が良いのに、眼底出血をした例があります。
ただし、眼底出血は時間差で起こる事もあるので、糖尿病の方は眼科に定期的に受診すべきです。
このように、血中インスリンの多い・少ないが明暗を分けます。
つまり、糖質オフやインスリン・オフ療法で、インスリンが少ない状態のまま、血糖値を下げた場合は、臓器障害が起こりにくいのです。
インスリンが少ない状態を維持すれば、
臓器へのダメージは少ない
以上、高インスリン薬について、でした。