今回は「フェリチン」について。
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また関連する動画もあります。
一般的な現状
「フェリチン(=貯蔵鉄)」とは、「細胞の中に蓄えられている鉄」の事です。
細胞が壊れると、血液中にフェリチンが出てきます。
採血で測る「血液中のフェリチン」は下記のような感じになります。
<血液中のフェリチン>
「細胞内のフェリチン量」x「壊れた細胞数」
=「血液中のフェリチン」
(注:本当は各細胞内のフェリチン量は細胞ごとに異なるので積分的な感じになります)
現代の日本の医療機関では、貧血さえなければ鉄は測りません。これは、保険適応が鉄欠乏性「貧血」となっている事にも関係もあります。
つまり、貧血のない鉄欠乏の場合には採血検査は保険適用とはなりません。
逆に言えば、保険診療では貧血があって初めてフェリチンを測る事ができます。
保険診療では貧血があって初めてフェリチンを測る事ができる。
つまり、保険診療では貧血がなければ、フェリチンは測れない。
また、「貧血のない鉄不足」でも症状が出る、という事は思ったこともない医療関係者がほとんどです。
しかし、実際にはかなりの方が「貧血のない鉄欠乏」の状態でも、多彩な症状に悩まされています。
貧血時の採血でも血清鉄のみ測定し、フェリチンは測らない、なんていうのもザラにあります。
鉄不足の症状って?
鉄不足の症状は、色々あります。
(1)骨・皮膚・粘膜
出血(あざ)、ニキビ、肌荒れ、コラーゲン劣化による骨・肌異常、爪・毛髪・舌の異常
(2)脳
不眠・集中力低下・学習障害・うつ・パニック障害、頭痛、イライラ、集中力低下、神経過敏、些細なことが気になる、立ちくらみ、めまい
(3)ホルモン
不妊症、甲状腺ホルモンの成熟障害
(4)白血球・免疫
免疫力の低下
(5)消化器・味覚系
氷を好んで食べる、土を食べる、金属を食べる、嚥下障害、食欲不振、下痢、便秘
(6)その他(不定愁訴)
ダルい、疲れやすい、冷え性、動悸、息切れがする、喉の違和感(喉が詰まる)、耳鳴り、肩こり、寝坊癖(朝起きられない)、節々の痛み(関節、、筋肉)、腰痛、レストレスレッグス症候群(むずむず足症候群、RLS)
このように、鉄不足は弊害しかありません。
他にも
・癌になりやすい
・やせにくい、糖質オフしてもやせない
・炭水化物、甘いものが無性に欲しくなる
などの場合もあります。
これにより、鉄不足を解消することで、やせはじめたり、糖質オフが上手くいくようになる事があります。
鉄が多すぎるとヤバいってよく見かけるけど・・・
典型的な「因果の逆転」です。
因果の逆転については、下記動画の5分時点あたりからご覧ください。
「癌や炎症」があると、細胞内から「フェリチン」が漏れて出てきます。
すると、血液中の「フェリチン」が増加します。
<実際>
「癌や炎症」
↓
「高いフェリチン」
それを各種の論文では、「癌や炎症」と「高いフェリチン」は「相関」がある!、だから、「高いフェリチン」はヤバいんだ!と言っている、という事です。
統計での「相関がある」というのは、単に「関係性がありそうだ」というだけです。
原因と結果を取り違えてはいけません。
<論文での間違い>
「高いフェリチン」
↓
「炎症・癌になる」(間違い)
原因と結果が逆ですね。
これを「因果の逆転」と言います。
統計で分かるのはあくまで「相関」までです。
どちらが原因で、どちらが結果かは、分かりません。
さらに、第3の要因が原因の場合には、その第3の要因に関しては全く知る事ができません。
統計はとても有用ですが、これらの特性をよく知っている必要があります。
細胞からフェリチンが血液に漏れてくるから、フェリチン高いのヤバいよね?
血液中のフェリチンは、全て細胞内から漏れて出てきたものです。
このため血液中のフェリチンを測定して、フェリチンが高ければ細胞内から沢山漏れて出てきている、とう事を示します。
「え?じゃぁ、細胞が壊れまくっててヤバいんじゃ?」
その場合もあります。
その場合が、先程の「癌や炎症」→「高いフェリチン」の場合です。
そうでない場合もあります。
血液中のフェリチンは、
「細胞内のフェリチン量」x「壊れた細胞数」
で決まります。
(本当は各細胞内のフェリチン量は細胞ごとに異なるので積分的な感じになります)
「癌や炎症」では、「壊れた細胞数」が増えるために、血液中のフェリチンが増えます。
<癌や炎症>
「細胞内のフェリチン量(増加無し)」x「壊れた細胞数(増加)」
=「血液中のフェリチン(増加)」
しかし、健康な状態、つまり「壊れた細胞数」が増えていなくても、細胞の中に蓄えられているフェリチンの量が増えれば、血液中のフェリチンも増えます。
当たり前ですよね。
なので、「フェリチンを増やしましょう」というのは、細胞を壊しましょう、ではなく、細胞内のフェリチンを増やしましょう、という事です。
<健康的に鉄の蓄えが増えた場合>
「細胞内のフェリチン量(増加)」x「壊れた細胞数(増加無し)」
=「血液中のフェリチン(増加)」
何か他にも鉄がヤバいっていう色々と論文があるんだけど?
もう1度、動画をどうぞ。
今後も様々な「鉄はヤバい」論文は量産されます。
そんな時は上記のような視点を持つと良いでしょう。
この「論文」というものについて、しっかりした考えを持つと良いでしょう。
また、「ビタミンはヤバい・無効」と全く同じ流れですので、ビタミンCの記事もご覧ください。
「ビタミンがヤバい」という一見、ちゃんとした論文も、少し内容を見れば粗だらけ、という事が分かると思います。
再度、「こてつ名誉院長のブログ」から引用しておきましょう。
(毒舌注意)、ダメ医者の見極め方
1)エビデンス医者
論文は玉石混淆といえば聞こえがよいが、実際は玉石石石石石混淆。
99%は「スポンサーバイアス」のかかったインチキ論文。
だから、自分の妄想理論にかなう論文だけ拾い出して理論をつくると、どんな理論でも作れてしまう。
論文の最後にあるacknowledgmentにはその論文のスポンサー名が書いてある。
ほとんどの論文はメガファーマなどのスポンサーがついている。
かつて、MRの面会を許可していた頃、”先生、こんな論文があります”と英語論文を持ってきていた。
acknowledgmentだけ読み、そこの製薬メーカーの資金援助付きだと分かり、ごみ箱直行。
論文なんか読むのは全くの無駄なので自分は一切読まない。
自分で治した症例を提示できない理論はインチキ。
そう言えば、”フェリチン100を目指すのは危ない”と言っているスットボケもいた。
(中略)
3)MEDLINE医者
MEDLINEで勉強していますと言う医者も多い。
しかし、MEDLINEは「パブリケーションバイアス」が極めて大きい。
メガファーマに援助された”ビタミンは効果がなく危険である”と言う論文が山ほど載っている。
”ビタミンは効果があり安全である”との多数の論文が掲載されているオーソモレキュラー医学雑誌(JOM)はMEDLINEに索引付けされていない。
そう言えば、”ビタミンCとビタミンEを飲むと寿命が短縮する”等と平気な顔をして言うスットボケもいた。
MEDLINEではなくJOMを全て読め。
(上記引用部分の強調表示は水野による)
いかに「MEDLINE」から引用された「論文」の「かたより」が大きいか分かりますね。
鉄不足はどうやって判断するの?
採血で判断します。
逆に言えば、採血検査しないと分かりません。
眼瞼結膜が白くなるとか、爪がスプーン状になる、などの鉄欠乏の特徴はありますが、相当ひどい鉄欠乏や貧血にならないと、そういう症状は出ません。
血算(血色素数=ヘモグロビン)、血液像(白血球分画)、血清鉄、フェリチン、TIBC、CRP、AST、ALT、γ-GT、T-bil(総ビリルビン)、D-bil(直接ビリルビン)、などを測定します。
つまり、貧血や鉄の他に、炎症や肝臓の数値なども同時に調べます。
炎症や肝臓の数値が上がっている場合には、「壊れた細胞数」が増えまくっており、それによって「血液中のフェリチン」は増えまくります。
このため、「細胞内のフェリチン量」は分からなくなります。
<炎症や肝臓の数値が上がっている場合>
「細胞内のフェリチン量(不明)」x「壊れた細胞数(増加)」
=「血液中のフェリチン(増加)」
こういった場合に「細胞内のフェリチン」を知るには、
・長年の経験と勘(笑)から、「細胞内のフェリチン量」を推測するか、
・炎症や肝障害がおさまってから再度検査する
必要があります。
炎症や肝障害がある場合には、それがおさまってから再検査を。
鉄欠乏があった場合は?
フェリチンが100以下の場合は鉄欠乏です。
フェリチンが40未満の場合には、重症鉄欠乏です。
鉄欠乏は鉄を補充しない限りは永遠に治りません。
妊娠希望、糖尿病、癌、肥満の場合には、(炎症や肝障害無しで)フェリチン300以上を勧める場合もあります。(全例で勧める訳ではありません)
鉄欠乏は鉄補充でしか治らない。
鉄補充以外にする事ってあるの?
鉄不足があった場合に、鉄を補充する以外にもすることがあります。
鉄欠乏がある場合は、何らかの原因があります。
・体内に入るのが少ない
・体内から出て行ってしまう
の2パターンです。
体内に入るのが少ない、というのは菜食の方などです。
体内から出て行ってしまうのは、体調に問題がない人であれば胃腸からの場合が多いです。
大雑把に言えば、このような病気です。
胃の病気:胃潰瘍、胃ポリープ、胃癌など
腸の病気:大腸ポリープ、大腸癌、大腸憩室など
ですので、鉄欠乏が見つかった場合、必ず便潜血検査を受けるのがお勧めです。
誇張ではなく、それで何度もポリープや癌などを発見しました。
鉄欠乏が見つかった場合には必ず便潜血検査を受ける!!
女性の鉄欠乏ではもう1つ注意が!
女性でも鉄欠乏が見つかったら便潜血検査を受けるのは必須です。
しかし、女性の場合は、別な可能性もあります。
・生理の出血が多い
・子宮筋腫がある
上記などの場合です。
鉄欠乏が見つかった女性の皆様はぜひ婦人科で診てもらいましょう。
鉄欠乏を発見してくれた医療機関から紹介状を書いてもらうのがベストですが、書いてくれなかった場合は、採血データ(やお薬手帳など)を持参して「鉄欠乏を指摘されました。子宮や卵巣などを診て下さい」と伝えると良いでしょう。
ちなみに子宮ガン検診と言った場合は「子宮頸がん検診」を指す事がほとんどです。
この場合、子宮の下の方のみの検査で、子宮筋腫があるかはチェックされません。
子宮「体部」や卵巣など上の部分を超音波などで検査してもらうとよいでしょう。
子宮体がんの検診を受けた、という場合は子宮筋腫もチェックされます。
鉄はキレート鉄か、医療機関処方薬を
貧血と鉄欠乏があると、医療機関で鉄剤が処方されます。
しかし、「貧血」はないものの「鉄欠乏」がある、という場合には保険では鉄剤を処方できません。
薬を医療保険を使って処方するには「保険適用」というものがあります。
鉄剤の保険適用は、すべて「鉄欠乏性貧血」です。
貧血がない時点で、鉄剤の保険適用での処方はできません。
この場合には、「キレート鉄」という鉄を摂取すると良いですが、これは国内では販売されていません(なぜか認められていない)。
世界的にはキレート鉄が普通に認められ販売されていますが、なぜか日本ではキレート鉄の販売が認められていません。
日本ではなぜか食物への鉄の添加もされていません。なぜか。
世界的に普通に認められている「キレート鉄」は、なぜか日本では認められていない。
国内で店頭販売されているのは「ヘム鉄」です。
「ヘム鉄」などというものが売っているのは日本だけ。
しかし、これは「高価」で「量が少ない」ため、既に鉄が不足している人の補充には向きません。量が少なすぎるためです。
何年もお高いヘム鉄を一生懸命飲んでいたのに、全く体内の鉄が増えていなかったという人を何人も診ました・・・。
鉄欠乏の人が「ヘム鉄」で、体内の鉄を増やそうとするのは、全くの無駄です。
キレート鉄を摂ってください。
鉄欠乏の人が日本独特の「ヘム鉄」で、体内の鉄を増やそうとするのは、全くの無駄。世界的に普及している「キレート鉄」を。
ただし、キレート鉄を漫然と飲むのではなく、必ず採血をして下さい。
3ヶ月〜半年に1回の採血が目安です。
鉄が足りてきたら、量を減らしたり、終了する必要があります。
キレート鉄を飲んでいる時は、採血を!
キレート鉄の量は?
人によります。
また、同じ人でも採血検査をしつつ、飲む量を調節する必要があります。
というのも、鉄を摂ると、かえって月経出血などが増えて鉄が減る人がいるためです。
鉄が少ない人の中には、結構な確率で「かえって鉄が減る」人がいるので要注意です。
ですので、必ず採血が必要です。
キレート鉄を飲んでいる時は、採血を!
漫然と飲むのはオススメしません。
鉄を摂ると出血が増えて、かえって鉄が減る人が結構いる!!
とりあえずの最初の量は、1日36mg〜100mgとする事が多いです。
が、これも飲む前に採血して量を決めるべきです。
キレート鉄はどれでも良いです。
割と売り切れていないのが「Now社」のものです。
iHerbというサプリメント取り寄せ会社(カリフォルニアにある)が最も値段がお手頃で、不良品が届いてしまった時なども日本語でサポートに伝えれば、送り直してくれます。
36mgのキレート鉄
このキレート鉄や、医療機関処方の鉄剤を飲みつつ、フェリチンを最低でも100以上を目指します。
日本のフェリチン基準値が異常値
フェリチンの「正常値」とか「基準値」という数値があります。
日本ではこれらの「基準値」や「正常値」が既に「異常値」になってしまっています。
「正常値(笑)」の状態です。
日本の基準値は以下のようです。
フェリチンの基準値
男性 17〜320くらい(検査会社によって異なる)
女性 4〜96くらい(検査会社によって異なる)
一方で、アメリカの名門医療機関、メイヨークリニックの基準値はどうでしょうか?
Results
The normal range for blood ferritin is:
For men, 20 to 500 nanograms per milliliter
For women, 20 to 200 nanograms per milliliter
基準値が全然違うのがお分かりいただけたかと思います。
アメリカでは小麦粉への鉄添加が法律で義務付けられています。
フェリチン基準値
男性:日本17〜320、メイヨー20〜500。
女性:日本4〜96、メイヨー20〜200。
いかに日本が異常な事になっているかお分かりいただけたでしょうか?
アメリカでは小麦粉への鉄添加が法律で義務付けられています。
世界:食物に鉄添加、 日本:鉄添加なし
世界:キレート鉄、 日本:ヘム鉄
世界:女性でもフェリン200まで正常、日本100をこえたら異常高値で減らす指導
日本は、食物への鉄の添加がなく、それを補うサプリメントも「ヘム鉄」しか店頭には売っておらず、フェリチンが100をこえたら「減らす」ように指導すらされます。
いかに日本が異常な事になっているかお分かりいただけたでしょうか?
世界の食品への鉄添加
世界では下記のように食品への鉄添加がなされています。
主要な国では鉄が食品へ添加されているのが分かります。
日本では食品への鉄添加はされていません。
日本では食品への鉄添加はされていません。
また食品への鉄添加をしている多くの国で「法律で義務付け」られています。
それほどに、鉄は不足しやすく、鉄は人間にとって大切です。
小麦粉 | 米国、英国、カナダ、トルコ、タイ、スリランカ、中南米22カ国 |
---|---|
精製糖 | グアテマラ |
とうもろこし粉 | ベネズエラ、メキシコ |
鉄タブ、シロップ | ブラジル |
塩 | モロッコ |
米 | フィリピン |
ナム、チャパチ | パキスタン、ネパール |
醤油 | 中国 |
ナンプラー(魚醤) | ベトナム |
欧米でもアジアでも、食品への鉄添加がされています。
小麦粉だけでなく、塩、米、醤油にも鉄添加している国があります。
欧米でもアジアでも、食品への鉄添加がされている。
小麦粉だけでなく、塩、米、醤油にも鉄添加している国がある。
世界各国で法律によって義務付けられるほど、食品への鉄添加は普及している。
それ程、鉄は不足しやすく、鉄は人間にとって非常に大切。
日本では食品への鉄添加はされていない。
最後に
最後に、今後も「鉄はヤバい」という話や、論文は「必ず」出てきます。
ビタミンはヤバい・無効というのと同じです。
今後も「鉄はヤバい」論文や話題は繰り返される
日本では食品への鉄添加はされていない。
以上、日本の異常なフェリチンの話、でした。