今回は、超よくある質問の1つ、
「先生、中性脂肪が高いのですが、どうなんでしょうか?」
について。
コレステロールはコチラ。
動脈硬化対策の薬以外についてはコチラ。
動脈硬化対策の薬についてはコチラ。
動脈硬化の原因についてはコチラ。
検査についてはコチラ。
イキナリ結論から。
対応は3つのパターンがあります。
・既にガッツリ動脈硬化している→動脈硬化治療
・糖質摂取で中性脂肪上昇→糖質オフ
・脂質摂取で中性脂肪上昇→そのままで良い
動脈硬化と高い中性脂肪の因果関係
「脂質摂取」による「高い中性脂肪」は「単なる結果」です。
「高い中性脂肪」自体は、動脈硬化の原因ではありません。
「高い中性脂肪」自体は、動脈硬化の原因ではない
統計論文の誤解釈
これは統計論文の誤解釈による弊害です。
「中性脂肪が高い」ことと、
「動脈硬化」に
「相関」がある。
これが統計論文で分かる事です。
逆に言えば、統計論文で分かるのは「相関関係」までです。
「なぜそうなるのか?」という「因果関係」については、
全く分かりません。
しかし、これを間違って
「中性脂肪が高い」から
「動脈硬化」する
という「因果関係」に誤解釈した
というのが、この結果です。
本来の「因果関係」は?
本来の「因果関係」はこうです。
「糖質摂取」→→「高い中性脂肪」
↓
インスリン過剰
↓
「動脈硬化」
「高い中性脂肪」と「動脈硬化」が
「完全に別クチ」である事が分かるかと思います。
「高い中性脂肪」と「動脈硬化」には
共通の原因「糖質摂取」
があります。
このような時に統計処理をするとあたかも「相関関係」があるように見えます。
これを「疑似相関」と言います。
この「擬似相関」は、いくら統計学的処理をしても分かりません。
統計学的な処理ができる範囲外にあるからです。
統計偏重な傾向がある論文では、この「擬似相関」を誤解していまいます。
「真の原因」に思い当たらないのです。
さて、次に「脂質摂取」による「高い中性脂肪」はこうです。
「脂質摂取」→→「高い中性脂肪」
↓
インスリンは分泌されない
↓
「動脈硬化しない」
もう1度、糖質摂取の方も再掲しておきます。
「糖質摂取」→→「高い中性脂肪」
↓
インスリン過剰
↓
「動脈硬化」
お分かり頂けたでしょうか?
「動脈硬化」に対する「真の原因」は、
「高い中性脂肪」ではなく「糖質の摂取」です。
「糖質摂取」から「動脈硬化」になる。
「脂質摂取」からは「動脈硬化」しない。
医療はこんなのばっかりです。
ありとあらゆる医療のジャンルで
「相関」(お互いに関係する)を、
間違った「因果関係」に誤解釈してしまいまくっています。
冤罪事件が多発しまくっています。
「相関」と「因果関係」は違う!
インスリンで動脈硬化する
インスリンで動脈硬化する、というのは今までの講演会でよく話してきました。
その動画が2つあります。
とはいっても動脈硬化が心配です!
そんな場合には、論より証拠という事でこの2つの検査を受ける事をオススメします。
・頚動脈エコー検査
・ABI検査(または、CAVI検査)
保険診療なら両方の検査を受けてもお値段は2000円程度です。
なお、見ているモノが違うので、どちらか一方だと動脈硬化を見逃す可能性があります。
受けるなら、2つも受けるのがオススメです。
ABI検査とCAVI検査は似た検査で、どちらでも大丈夫です。
基本的にはどちらかの検査機器しかないので、医療機関においてある検査機器で検査してもらいましょう。
とにかく中性脂肪を下げたいんです!
健診とかで「中性脂肪が高いから〜」などと、色々言われたくないんです、などなど。
さて、中性脂肪は直前の食事に左右されます。
血糖値と似ていますね。
つまり単に中性脂肪の数値を下げるだけなら、事前に食べなければ良いです。
食べない時間を長くしてから採血検査を受ければ、中性脂肪は低くなる
12時間あけて採血しても高い人は、
24時間は糖質と脂質を控えてから採血すれば
バッチリと中性脂肪が低い値になります。
前日に焼き肉をしこたま食べたり、
お酒を超飲んだりしてから
翌日の採血をすると、中性脂肪は超高い可能性があります。
中性脂肪とコレステロールの違いがイマイチ分かりません!
中性脂肪(トリグリセライド)には、
何とHDLコレステロールやLDLコレステロールの中にも入っています。
パッキングされた荷物のような感じです。
そんな中性脂肪は、体のエネルギーになります。
中性脂肪は身体の燃料。
なお、コレステロールは身体の材料です。
コレステロールは身体の材料。
ホルモンの材料になったり、
細胞の膜の材料になったりします。
中性脂肪とコレステロールを
「役割」に注目して、
超ものすごくザックリ言えば、
中性脂肪=ガソリン
コレステロール=コンクリート
みたいなイメージですね。
江部先生の中性脂肪についての記事
さて、中性脂肪についても我らが江部先生がいくつか書いてくれています。
さすが江部先生っ。
ドクター江部の糖尿病徒然日記「中性脂肪と糖質制限」
ドクター江部の糖尿病徒然日記「空腹時中性脂肪値と食後中性脂肪値」
とても勉強になりますね。
体脂肪と中性脂肪ってどう違うの?
これも間違いがちです。
体脂肪は、脂肪細胞に蓄えられた脂肪などを指します。
内臓脂肪や皮下脂肪です。
血管の外の話です。
皮下脂肪は、「お腹まわりの贅肉」というやつです。
腹直筋の外側ですので、手でつまめる部分です。
一方、採血で調べる中性脂肪は、
「血液中の中性脂肪」で、血管の中・血液中の話です。
体脂肪は脂肪細胞の中の脂肪、
中性脂肪は血液中の脂肪。
中性脂肪は一時的な数値?
上で、中性脂肪は糖質と脂質を食べると上昇する、と書きました。
すると、中性脂肪は一時的な数値なのでしょうか?という疑問を持つ方もいるでしょう。
そうです、中性脂肪は常に一時的な数値です。
血糖値と同じです。
食後には上がり、
食べてなければ下がる、
それだけです。
しかも、動脈硬化とは直接の因果関係はありません。
単に、検査で低い数値を出したいなら、
上記のように絶食時間を長くすれば中性脂肪は低い数値になります。
中性脂肪の数値で、一喜一憂してもしょうがありませんね。
とはいえ、中性脂肪が1000以上の時は急性膵炎を起こすリスクの高いので、注意は必要です。
実際に2例ほど、超高い中性脂肪の人で急性膵炎を起こした方を診ました。
善玉とか悪玉とかは?
よく間違いがちなのは「善玉菌」「悪玉菌」です。
これは腸の中の細菌について言ったものです。
コレステロールは血管の中の話です。
全く別ですね。
そして中性脂肪には善玉も悪玉もありません。
また、
コレステロールも腸内細菌も、善玉・悪玉という言葉は、
テレビなどで説明をすっとばして端的に言うために使われている言葉です。
その知名度とは裏腹に、科学的な裏付けはとっても薄いのです。
実際は、コレステロールも腸内細菌も、
そんなに単純に2つに分けられません。
メディアに振り回されないようにしましょう。
以上、中性脂肪が高い、でした。